山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー金曜上映会[土曜版]
〈「ともにある Cinema with Us」特別版 福原悠介監督特集〉
2023年4月22日[土] 山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー試写室

金曜上映会土曜版「ともにあるCinema with Us特別版」として福原悠介監督の2作品を上映しました。
『飯舘村に帰る』(2019)は、山形国際ドキュメンタリー映画祭2019 ともにあるCinema with Us(東日本大震災にまつわる作品の特集プログラム)でも上映された作品。避難指示が解除されて飯館村に戻った人々を、民話サークル「みやぎ民話の会」の島津信子さんが訪ね、話を聞きます。
仙台のバンド「yumbo」のリーダーで喫茶店を営む澁谷浩次のソロアルバムのレコーディングと人となりをとらえた『Lots of Birds』(2021)は、渋谷さんの飄々とした佇まいと語り、その延長線上にあるような歌声が印象的な作品です。

2作品の上映後、福原監督に作品の制作経緯などをお話しいただきました。

どちらの作品も、福原監督とは別の人物が「聞き手」を務めています。
『飯舘村に帰る』の島津さんが所属する「みやぎ民話の会」が行っていたのは、民話を蒐集するだけではなく、語る人を訪ね、暮らしの話なども聞く「採訪」でした。
福原監督は、震災後に被災地を訪れたさまざまな映像作家やアーティストの制作を手伝う中で、映画制作というものと出逢い直したと言います。「採訪」という記録のあり方は、語っている内容だけでなく、語っている場を撮るという福原監督の映画制作に大きな影響を与えました。
『飯舘村に帰る』は、飯舘村の人々と島津さんの信頼関係、『Lots of Birds』は澁谷さんと改めて対峙するバンドメンバーとの関係性によって、その場の空気、フレームの外にいる聞き手の存在も映し出します。
数回前の金曜上映会で上映された『圧殺の森』(監督:小川紳介/1967)の撮影を務めた大津幸四郎カメラマンの「風情」という言葉も引用されていました。

会場からは『飯館村に帰る』のエピソードの順番や、エピソードを語らない人物の佇まいについての感想や質問がありました。

客席にいらっしゃった島津さんにも一言いただきました。
「人々の暮らし、その人の風景が聞き出せたらいいなと思っていました。じれったい映画だと言われることもありますが、このように震災のこと以外—村のことや自分のこと—を語る方が伝わりやすいのではないかと思いました。行くたびに良い所だと思わせてくれる飯舘村。この村を愛している人が戻っていると思うと、映画がこの先を物語っているのではと思いました。」

福原監督は、たびたび金曜上映会に観客としてご参加いただいています。
今回の上映に際して福原監督が書かれたnoteも是非ご覧ください。
福原監督 note 『飯舘村に帰る』をふりかえるー金曜上映会(土曜版)にあたって

[アンケートより]
・「場づくり」「時間づくり」には細やかな心づかいが感じられ、心地よかったです。
・会場から自然に笑いがうまれて、みんなで囲んで見るのにいい映画だなあと思いました。(『飯舘村に帰る』)
・村のみなさんがとてもいい表情をしていると思いました。(『飯舘村に帰る』)
・音楽もとてもすばらしいのですが、澁谷さんの日常やこれまでの生活と地続きにあることを感じました。(『Lots of Birds』)
・すごく楽しかったです。金曜上映会ひきつづき参加させていただきます。

福原監督、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。小さな上映会ですが、ご愛顧いただければ幸いです。

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[金曜上映会]
認定NPO法人山形国際ドキュメンタリー映画祭主催の定期上映会です。山形ドキュメンタリーフィルムライブラリーを主な会場に月1回開催しています。会場や曜日を変えて上映を行うこともありますので、YIDFF公式ウェブサイトでご確認ください。

[311ドキュメンタリーフィルムアーカイブ]
2011年3月11日に起きた東日本大震災の記録映画とその作品資料を蒐集・保存し、作品情報を世界に発信するプロジェクトです。今回上映した『飯館村に帰る』も収蔵されています。詳しくはこちら

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