YIDFF 2023会期終盤の10月10日[火]には、台湾ドキュメンタリー映画の「界隈」で「わいわい」する、と命名されたシンポジウム「台湾ドキュメンタリー映画界わいわい」が開催されました。公的支援と制作者の互助活動の両輪で台湾ドキュメンタリー界を活性化させるプレイヤーをパネリストに迎えた情報満載の刺激的なイベントとなりました!

パネリストには次の皆さんが登場:

●楊子暄(ジェシー・ヤン)。Taiwan Docsは、台湾ドキュメンタリーの海外展開を促し、情報収集・連携・人材育成を行う事務局。国家機関「国家映画視聴文化センター(TFAI)」傘下にある。

●陳婉伶(チェン・ワンリン)。台湾国際ドキュメンタリー映画祭(TIDF)は、1998年より隔年開催されている国際映画祭。世界・アジア・台湾作品の各コンペ部門の他、幅広い特集や交流プログラムを企画。次回2024年5月に向けて作品募集中。

●陳婉真(カイト・チェン)。台北ドキュメンタリー・フィルムメーカーズ・ユニオン(台北市紀錄片從業人員職業工會)は、ドキュメンタリー制作にまつわる労働者の権利を守り、台湾のドキュメンタリー業界の育成と発展を目的とする。組合員は監督、撮影、批評家、作曲家、キュレーターを含め500人におよぶ。

●黃柏喬 (ジョー・ホアン)。南方影展は、台湾南部地方にアート系映画の鑑賞機会を増やそうと、2001年に国立台南芸術大学の教員・学生が立ち上げた映画祭。主に中国語圏を描くインディペンデント映画(ドキュメンタリー、短編、実験映画、アニメーションを含む)を上映する。

●蕭美玲(シャオ・メイリン)はアスペルガー症候群の娘との12年を母親が描くドキュメンタリー作品『平行世界』の監督。アジア千波万波で上映。

司会にはYIDFFの藤岡朝子理事。

文化芸術活動が集中しがちな台北市に対して、台南市で市民参加と街づくりに焦点をおいた映画祭の開催に活動する南方影展、台湾ドキュメンタリーの人材育成や海外展開をがっちりサポートする政府機関、制作者たちの社会保障と相互扶助を後ろ盾する労働組合の存在に会場は驚き「うらやましい」の声が。

台湾ドキュメンタリーのエコシステムの全貌が披露されたところで、蕭美玲監督が発言。「自分はこれらの制度を全然知らなかった。12年間、こつこつと一人で『平行世界』を作っていたので」と。意欲のある作り手は、制作・配給環境の整備のあるなしに関わらず、やはり作品を作るのです。(翌日、日本映画監督協会賞を受賞しました!)

TIDFの陳婉伶さんらがYIDFFの活況と精神を高く評価する一方で、最後に会場から日本ドキュメンタリーの編集・プロデュースを手がける秦岳志さんが日本の状況やご経験について発言し、シンポジウムで得られた日台の学び合いの今後の継続に期待が寄せられました。

日台ともに、次世代の才能が健全に循環する産業に身をおき、多くの多様なドキュメンタリー作品が作られ、制作者・上映者にとって環境が改善、観客が拡大することを目指しましょう!