4月12日の金曜上映会〈ロシア青春クロニクル〉

今回の金曜上映会のテーマは「ロシア」。1961年から1986年、ガガーリンの宇宙飛行からソ連崩壊直前までの時代のロシア人青年の青春を、膨大な量のプライベート・フィルムで作り上げた『青春クロニクル』。1910〜20年代のロシアの記録映画や劇映画を編集・再構成し、詩人アンドレイ・ベールイの生涯を描く『天使狩り』を上映します。

『青春クロニクル』 14:00-、19:00(2回上映)

『青春クロニクル』

山形国際ドキュメンタリー映画祭 2001 インターナショナル・コンペティション上映作品

監督:ヴィタリー・マンスキー/ロシア/1999/91分

作品紹介:

ヴィターリー・マンスキー監督は膨大な量のプライベート・フィルムと格闘し、あるロシア人青年の青春のクロニクル(年代記)をつくりあげた。1961年から1986年、ユーリ・ガガーリンが宇宙へ行ったその時からソ連が崩壊する直前までの時代。幼年時代、父母の離婚、母と行った海水浴の記憶、友達との喧嘩、初めてのキス。誰もが思い当る青春のひとコマが、監督自身のナレーションによって綴られていく。社会主義国ソビエトのごくありふれた中産階級の家族の何気ない日常を映し出している。

 

『青春クロニクル』

監督のことば:

この作品について簡潔に述べるのは難しい。なにしろ準備期間だけでも3年以上かかり、製作費用についても、準備期間中だけでも幾度となく上方修正しなくてはならなかったから。モンタージュ素材として各地のアマチュア個人映画のアーカイヴから集められた1945年から1991年にかけてのフィルム(8mmと16mm)は5,000 時間分を超えた。『青春クロニクル』はソビエトの人々のなかでも、最も矛盾に満ちた世代の人生を再現している。この一種のフィルム・エポック作品においては、ある若者が何千人もの彼の同世代の人々の経験を吸収している。その結果そこには人生の様式とでも呼ぶべきものがたちあがる。

この映画の主人公は1961年4月11日に生まれた。ガガーリンが初の宇宙飛行を成功させ、ソビエト史上でも人々が最も楽天的だった日の前日である。そこから、1986年、帝国の崩壊が始まる年まで、映画はひとりの男の人生だけではなく国家全体の命運を年ごとにたどっている。この映画は、ひとつの時代についての最もリアリスティックな肖像である。プロの手になる映像は何ひとつ使われていない。オープニングからエンディングまで、この映画を構成しているのはソビエトの「アマチュア映像作家」たちによる自分たちのための(観客の目は意識しない)虚飾のない家族の記録である。この意味において、『青春クロニクル』はロシア映画史上初の「人民の」映画、大衆自身による映画だと言える。

ヴィタリー・マンスキー

 

『天使狩り—預言者詩人の四つの情熱』 16:00(1回上映)

『天使狩り』 

山形国際ドキュメンタリー映画祭 2003 インターナショナル・コンペティション上映作品

監督:アンドレイ・オシポフ/ロシア/2002/56分

作品紹介:

ロシアの詩人アンドレイ・べールイの生涯を実験的手法で描いた異色作。全編1910年代から20年代にかけてのロシアの記録映画や劇映画が編集・再構成され、ベールイが生きてきた時代と彼をめぐる4人の女性についての物語が描かれる。「神の恩恵を受けた者」「幽霊の化身」「ゴーゴリの再来」「ヒステリー」「自惚れ屋」などと称されたベールイの内面に迫る。

監督のことば:

アンドレイ・ベールイという、非常に奇妙な人間、もしかして、慣れ親しんだ一般的な認識では、人間と呼んでいいのかと思われさえするような人物についての映画を撮るチャンスが訪れた時、私はその物語の形式を見つけることに興味を覚えた。伝記映画を撮るように、伝統的なやり方で撮ることも可能だった。そのようなやり方で撮っていたとしても、十分に面白い映画になっていたには違いないが、私個人としては、あまり興味をそそられるものではなかった。そのようなわけで、私たち、すなわち、私と、私の協力者である脚本家のオデルシャ・アギシェフは、別の観点に立って構想を練った。アンドレイ・ベールイという人物の運命を、1910から20年代のサイレント映画における新しい形式、新しい映画言語の探求に関する物語を通して語りたいと思ったのだった。

多くの事柄は、直感的に起きている。それは、いくつかの法則と関係があり、それらの法則に従って、人は自身の内部のリズムと共に生きているのだ。確かに、象徴主義者たちは、目に見えるものの中に見えないものを、有限の中に無限を読み取ろうとしていることを隠さなかった。そして、自分たちの人生を、ゲームであるかのように捉え、生活と芸術の間に境界線はなかった。

大事なのは、その人の物語と、その物語に結びついた感情が映画で表現されること。映画というものは、情報であるはずがなく、感情なのだ。

アンドレイ・オシポフ

 

[会場]山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー試写室
[料金]鑑賞会員無料(入会金・年会費無料)
[主催]認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
[問い合わせ]電話:023-666-4480 e-mail:info@yidff.jp