4月27日[金]〈予測された喪失〉

山形国際ドキュメンタリー映画祭 ’93 インターナショナル・コンペティション上映作品から、優秀賞を受賞した『予測された喪失』を上映します。本作のウルリッヒ・ザイドル監督の最新作『サファリ』はただいま全国公開中です。

『予測された喪失』 14:00- 18:45-(2回上映、夜の部開始時間ご注意ください)

『予測された喪失』

山形国際ドキュメンタリー映画祭 ’93 インターナショナル・コンペティション 優秀賞受賞作品

監督:ウルリッヒ・ザイドル/オーストリア/1992/118分

作品紹介:

1992年、冬。一人のチェコ人男性が服を脱ぎ、活発な音楽に合わせて痩せた体で気がふれたように踊る。二人のオーストリア人女性が、その贅沢な食事についてペチャクチャ喋りながらソファに座る。ザイドルのセミ・ドキュメンタリー映画はこの2つのシーンで始まり、終わる。その間に個人的な物語が進行する。やもめのゼップが新しい妻を探しているが、それは愛のためではなく、かつて妻が用意して冷蔵庫に保存しておいた食事が徐々に底をついてきたからだ。

 

『予測された喪失』

 

鉄のカーテンの両側に住む村人たちの生活が、細部に至るまできわめて繊細に記録されている。寓話めいた要素が、東と西という、地理的には近いがまったく異なった二つの世界の関係の中に織り込まれる。片方には物の豊かさと消費、もう片方には貧困と後進性がある。これは、古い世代の寂しさと孤立について、また数々の“喪失”について語ってくれる、その土地と人々の感傷的な肖像である。それは若さと愛の喪失であり、国境と故郷の喪失である。

 

『予測された喪失』

 

こうした感覚は、映画全体を通じて低く垂れ込める重々しい雲といった暗い映像によって強調されている。カメラは屋内シーンと屋外シーンの間を踊るような動きで滑らかに進み、絶えずドキュメンタリーと長編劇映画との境界線を消滅させる。この映画は、そのスタイリッシュさと演出の多用にもかかわらず、きわめて信頼に足るものとなっており、ロマンティックなヴェールをはぎ取られ、踊るチェコ人のごとく剥き出しになった現実性を提示している。

レグラ・ケーニッヒ
(YIDFF ’93 公式カタログより)

 

『予測された喪失』

 

監督のことば:

私たちがこの作品の撮影を開始した時には、どんなラストになるかまだ不明であった。映画は男やもめのオーストリア人、ゼップが旧東地区で嫁探しをする話である。旧東地区なら、安く嫁が手に入るという。チェコに住む未亡人ポーラは、ゼップに、西での豊かな生活を約束してくれる男の姿を見る。

私の当初の目的は、この一個人の話を通して、境界線を挟んだ二つの土地の生活環境の何かを伝えることだった。しかし、この映画は単なる時事問題の取り上げで終わることはなかった。この特定の題材は一方は貧困、もう一方は繁栄という、東と西の対比を描いたのではなく、人生における世界共通の事柄—成就されることのない愛、孤独、老い、そして死を扱っているのだ。

私はこの作品がドキュメンタリーになるのか、それともむしろ劇映画になるのか、見当がつかなかった。だが、最初からその境界を自由に行き来するような作り方をするつもりであった。

田舎なので自分たちの生活なんて「面白くも何ともない」と初上映の日まで信じこんでいた人々と数ヶ月にわたって共に撮影の仕事をするのは、たいへんすばらしく、魅力あふれた経験であったことを忘れずに言っておこう。

ウルリッヒ・ザイドル

 

『予測された喪失』

 

[会場]山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー試写室
[料金]鑑賞会員無料(入会金・年会費無料)
[主催]認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
[問い合わせ]電話:023-666-4480 e-mail:info@yidff.jp