「山の恵みの映画たち2019」
2019年3月15日[金]〜17日[日]
会場:フォーラム山形

山と自然をみつめる特集上映企画「山の恵みの映画たち2019」が、3月15日[金]から始まります。

気になる作品がたくさんありすぎてどれを見ればいいか迷ってしまう…。
そんなあなたのために、3日間合計14作品の見どころを、3回にわけてご紹介します。
(結局すべて紹介しますので、ますます迷うこと間違いなしです。)

「山の恵みの映画たち2019」作品紹介①

『ヒマラヤの聖峰 ナンダ・コット征服』
『満山紅柿 上山 — 柿と人とのゆきかい』
『海の産屋 雄勝法印神楽』☆

『ディア・ハンター 4Kデジタル修復版』
『山〈モンテ〉』

「☆」は上映後にゲストトークあり


『ヒマラヤの聖峰 ナンダ・コット征服』

撮影:竹節作太/日本/1936年/28分

◯上映日時:2019年3月17日[日] 15:30~15:58
※同時上映:『標高8,163m マナスルに立つ』(15:58〜17:35)。チケット1枚で両作品をご覧いただけます。

 

協力:毎日映画社

幻の山岳ドキュメンタリーが、80年の時を超えてスクリーンに!

 戦争の足音が聞こえる1936年、立教大学山岳部の若者たちは前人未到の聖峰ナンダ・コットを目指した。日本人初のヒマラヤ登頂となる偉業への挑戦だった。

映像やナレーションの節々にきな臭い時代の雰囲気が漂うが、それを差し引いてもこの映像はあまりに素晴らしい。偉業に挑む隊員たちの高揚感、現地ポーターとの生き生きとした交流、そして吹雪の一瞬の切れ目を狙っての登頂の瞬間。臨場感あふれるナレーションと相まって、一瞬も目を離すことのできない濃密な28分間。

山岳映画史に残るこの名作を撮影した大阪毎日新聞の記者、竹節作太は、クロスカントリーでオリンピックに出場経験があるほどの雪のスペシャリストだったという。今のように軽量かつ高機能な装備などなかった時代。10キロを超えるゼンマイ式のカメラと大量の35mmフィルムを背負っての登山は、それだけですでに冒険である。標高6,000メートルを超える極寒のなか、フィルムの詰め替えのために手袋を外すと、一瞬にして指が凍えて動かなくなったという。極限の状況下で撮影された登山映像は、まさに圧巻。

しかしながらこの奇跡的な山岳ドキュメンタリーは戦争のどさくさのさなかに忘れ去れ、いつしかフィルムは行方知れずとなっていた。それが2016年、日本山岳会(東京・市ヶ谷)の倉庫で発見される。撮影から80年後のことであった。このドキュメンタリーは逸話に事欠かない。

本作がデジタル化され映画館で一般公開されるのは、「山の恵みの映画たち2019」が初めて。標高6,867メートルの未踏峰に挑んだ若者たちの姿が、80年の時を経てスクリーンに躍動する!


『満山紅柿 上山 — 柿と人とのゆきかい』

監督:小川紳介+彭小蓮(ペン・シャオリン)/日本/2001年/90分

◯上映日時:2019年3月15日[金] 17:00~18:30

 

紅柿ころころ、こころがほっこり。山形県上山市が舞台の里山ドキュメンタリー。

 上山市牧野村に移住し映画製作を行った日本を代表するドキュメンタリー映画監督、小川紳介。彼の残した映像とメモを元に、中国の彭小蓮が完成させた里山ドキュメンタリー。寒村の冬の収入源として始まった干柿作りは、自然と人間の営みの交錯点となり、里山に独特のリズムと息遣いをもたらす。

 収穫、皮むき、乾燥、包装、出荷…。工程のひとつひとつに里山の人々の工夫が施され、小さな果実は人の手から人の手へと旅をする。鮮やかな紅柿たちが、地域の人々みなの子どもであるようで、なんとも愛おしい。紅柿は里山に育まれ、干柿作りは里山に生きる人々をつなぐ。柿と里との類稀なる相思相愛。柿を語る人々の顔が、こんなにもいきいきと輝くのはなぜだろう。

 本作の元となる映像が小川プロにより撮影されたのは1984年のこと。「紅柿篇」として『1000年刻みの日時計ー牧野村物語』(1986年公開)の一部となるはずだったが、干柿作りのシークエンスはお蔵入りに。小川の死後、幻の「紅柿篇」を完成させるべく地元の有志たちが立ち上がり、小川の最晩年に師事していた中国の彭小蓮に監督をオファー。師の残したフィルムに手を入れることを一度は断った彭であったが、5時間半に及ぶ未編集のフィルムと創作ノートを引き継ぎ、牧野村での追加撮影を敢行してついに「紅柿篇」を完成させた。小川が他界してから9年後の春、2001年のことだった。

 それからさらに月日は流れ、時代はますます加速度的に変化している。小川紳介が記録者としてどうしてもフィルムに収めたかった語る、人と自然とが共存する里山の姿に、いまを生きる私たちは何を見出すのだろうか。在りし日の幻影か、懐古か、郷愁か…。
紅柿は今年も上山の四季を彩る。


『海の産屋 雄勝法印神楽』

プロデューサー:手塚眞、三浦庸子/監督:北村皆雄、戸谷健吾/日本/2018/75分

◯上映日時:2019年3月16日[土] 13:00〜14:15
*上映終了後に北村皆雄監督、戸谷健吾監督のトークがあります。

自然は人々に豊かな恵みをもたらすとともに、ときに凶暴な顔を顕します。これは、二つの顔をもつ海の物語り。

 宮城県雄勝半島、石巻市の漁村は3.11東日本大震災の津波で46軒中、1戸だけを残し被災しました。ホタテや牡蠣やワカメの養殖が盛んな天然の漁場は、大津波によって一変。その絶望の淵から立ち上がったのは、村に残ることを決めた12人の漁師たちでした。

ここには、およそ600年前に出羽三山の修験者が伝えたとされる法印神楽が今も村人によって継承さています。

「いっさい、いっさい、海を恨んでいねぇ」と、男たちは生活の再建と同時に、祭りの復興に乗り出しました。流出した一切の神楽面と祭具を作り直し、何もなくなった立浜地区の海辺に柱を立て、神楽舞台を作ったのです。

神楽に憑かれて“好きの神”を自称する漁師たちが、祈りの神楽を舞い、笛と二人の太鼓打ちが息を合わせ、600年前と変わらぬリズムを打つ。産屋の庭は神楽が舞い遊び、笛・太鼓の音が、国生みの混沌の中から命の誕生を告げる産声のように響き渡りました。

石巻や仙台、県外に避難した人たちも帰ってきました。仮設住宅で暮らす人々も、祭りの神楽に元気づけられ、夢をふくらませてゆきます。

海辺に立てられた舞台、そこでの大トリは「産屋」という演目。それは新しい命を再生し、力強く鼓動させてくれる海の豊穣と時として凶器に変わる海の荒々しさの二つが、一つの神の中に同居していることを表わし伝えるものでした。

東日本大震災から1年後の雄勝法印神楽を通して、まさに、被災と芸能が交叉する姿をとらえた優れたドキュメンタリー映画であり、神楽の担い手である村人や漁師たちの、立ち上がる姿を描く人間ドラマでもあります。

自然に生かされ、自然と共に生きてきた、これからも生きようとする人間の根底にある思いが、被災という極限の状況の中で、生きた言葉で語られる凄さと安らぎがこの作品にはあります。

そして人と祭りと自然、その強くしなやかな繋がりをあらためて見せてくれる傑作といえるでしょう。お薦め作品です!


『ディア・ハンター 4Kデジタル修復版』

監督:マイケル・チミノ/主演:ロバート・デ・ニーロ/アメリカ/1978年/184分

◯上映日時:2019年3月15日[金] 19:30〜22:34

 

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泥沼化するベトナム戦争を舞台に人間の狂気を描き切ったハリウッド不朽の名作が、40年の時を経て4Kリマスター版でスクリーンによみがえる!

 1960年代末、アメリカはペンシルバニア州。マイケルとニックの兄弟は、愛すべきやんちゃな仲間たちとともに青春を謳歌している。製鋼所の仕事が終われば行きつけの酒場で(「君の瞳に恋してる」を口ずさみさながら)ビールを飲み交わし、休みの日には車を飛ばして山へ鹿狩りへ…。しかし兄弟は、仲間のスティーブンとともにベトナム戦争への従軍が決まっているのだった。

出兵を目前に控えたある日、スティーブンの結婚式が行われる。ロシア正教のしきたりにならい、挙式はあくまで厳かに、そして宴は盛大に。「カチューシャ」の演奏とともに飲んでは踊り、宴は永遠に続くかのように思える。そこに亡霊のように迷い込むベトナム帰りのグリーンベレー、そして純白のドレスに染みる赤ワインの滴。やがて夜は明け、男たちはまだ見ぬ戦地へと向かう…。

配役は、仲間たちのリーダー格で鹿狩りの名手マイケルにロバート・デ・ニーロ、その弟で自然を愛する繊細な二枚目ニックにクリストファー・ウォーケン、その恋人役リンダにメリル・ストリープ。名優たちの若き日のみずみずしさ、そしてどこか危うい緊張感がスクリーンに充ち満ちる。

人間の暴力性と狂気、タナトスの結晶たるロシアンルーレットがあまりにも有名な本作であるが、だからこそ戦火から遠く離れた若者たちの故郷、ペンシルバニアの山脈の美しい稜線がなおのこと心に残る。青春の象徴でもあった鹿狩りは、本物の暴力と恐怖を体験した者にはもはや純粋な喜びを与えてはくれない…。40年前の若者たちが直面した絶望、心に負った傷は、21世紀を生きる我々に何を問いかけているのだろうか。そして美しい山々は、何を語りかけているのだろうか。

『ディア・ハンター 4Kデジタル修復版』は、この度フォーラム山形の協力を得て特別に「山の恵み」のラインナップに加えることができた。この名作を「山映画」としてお届けすることができることにあらためて感謝するとともに、往年の映画ファンにも現代の若者たちにも、一人でも多くのみなさまにお楽しみいただけることを願ってやまない。圧倒的な熱量で描かれる青春群像劇を、とくとご覧あれ!


『山〈モンテ〉』

監督:アミール・ナデリ/2016年/イタリア、アメリカ、フランス/107分

◯上映日時:2019年3月17日[日] 13:00~14:47

 

© 2016 Citrullo International, Zivago Media, Cineric, Ciné-sud Promotion. Licensed by TVCO. All rights reserved.

小さな人間、大きな山。その壮絶なる対峙。巨匠アミール・ナデリがたどりついた究極の「山」映画!

 舞台は中世イタリア、南アルプス。屹立する岩山が日差しを遮り、冷たい風が吹き降ろす荒野には、雑草すらもまともに育たない。まわりの住民が次々に去ってゆくなか、先祖が眠るその地を、アゴスティーノとその家族は決して離れようとしない。村人からは異端者扱いをされ、かろうじて収穫した作物は商いにならない。過酷な自然、そして人間社会の偏見と不寛容とが、孤立無援の一家をじりじりと追い詰める。

 自然からも人間からも見放され出口の見えない生活に、追い打ちをかけるように降り懸かる家族離散の危機。絶望の果てにアゴスティーノは槌を手にし、苦難の元凶たる山、己の宿命に挑む…。

 『駆ける少年』(84)、『水、風、砂』(89)でイラン映画の新しい時代を切り拓き、世界中の映画ファンを魅了してきたアミール・ナデリ。日本では、西島秀俊が孤高の映画監督を怪演した『CUT』(2011)が記憶に新しい。

 本作『山<モンテ>』は、人間という小さな存在が不条理な状況に立ち向かう姿を繰り返し描いてきた巨匠が、念願のイタリアロケを敢行したどり着いた極限のドラマ。「山」というストレートなタイトルに違わず、そびえ立つ岩山の物体としての重量感、絶望的なまでの崇高さ、その凄みは圧巻。

 高ければ高いほど、山はより多くの光を浴び、その影はより広く長くあたりを包む。山の光と陰、恵みと脅威…。いや、そんなナイーブな二言論はこの作品には通用しない。山が山として、ひと塊りのマッスとして、絶対的な他者として人間の前に立ちはだかる。それはまだ誰も見たことのない山の姿、誰も体験したことのない映画である。

「山<モンテ>」公式サイト
http://monte-movie.com